Voice of Kasai Mitsutake 笠井瑞丈『第九交響曲を踊る1年を目指して』

Voice of Kasai Mitsutake

長年海外を含む多くの舞台で踊り続けてきた笠井瑞丈が、昨年はセッションハウスで「ダンス・ブリッジ〜トーキョーの阿国」に出演したりしてきましたが、今年は以前もやったようにナイト・セッションで多くのダンサーとベートーベンの交響曲第9番全曲を踊ることに挑戦します。その心意気を書いてくれました。

 

第九交響曲を踊る1年を目指して 一般社団法人セッションハウス企画室理事笠井瑞丈

 

2025年です。毎年書かせて貰ってます。今年はこれからの未来について書いていきたいと思います。20代の時にダンスと出会い、沢山の出会いや、沢山の景色を見る事ができました。ダンスと出会ったことで、多くの経験を積む事もできました。希望を持って始めたダンスも、時には辛くなったり、辞めたくなったり、そのような時もありました。そして気づけば今年50歳になります。ダンスもまだなんとか辞めずここまで続けてます。ここまで続けて来れた事は、自分だけの力だけではなく、やっぱり周りの人たちの力によるものもあります。そして場所との出会いもあります。僕にとって一番大きなことは、やっぱりセッションハウスとの出会いです。1997年自分の処女公演の会場としてセッションハウスをレンタルしたのが、この場所との出会いです。そこからもう何公演したか分からない位ここで踊らせてもらいました。そしてこの場所を通して沢山の出会いもありました。そのような場所を頂けたから、続けられるというのが大きいと思っています。この事はダンスから得られた本当に大きな出会いの一つです。そして数年前から、私もセンションハウスの法人の理事に就かせていただきました。そしてどのようにこれから、未来に向けて、自分のダンスを、そして、セッションハウスの場所をどのように作っていけるかを、考えていこうと思っています。

笠井瑞丈

 

まず今年から取り組んでいることとして、10年前に私はここで『night session』と言う企画を立ち上げ、一年間12人のダンサーと即興デュオの公演を行なってきました。それをまた違った形でやろうという試みです。今回はデュオに拘らず、複数人で行う即興公演をやっていきす。普段セッションハウスで行っているダンス公演とは違う形を打ち出したいというのが一番の課題です。ミュージシャンが即興セッションするように、ドリンク片手でダンスを楽しむという形にしたいと思ってます。
まず第一回目の一月は、伊藤キムさん、鈴木ユキオさん、皆川まゆむさん、私の4人で第一回目を行いました。今回はベートーヴェン第九全楽章を使用しました。第九という親しむやすい音楽にダンス、大雑把な構成だけを決めて、基本は全部即興です。このやり方で今年一年間、様々なゲストダンサーを迎えて、隔月でこのナイトセッションライブをやっていこうと思っています。ダンサー同士もそこで繋がり、そしてお客さんとも新しい繋がりを持てる場を作っていけたらいいなと考えています。まず第一回目を1月に行ったので、今年はあと3月 5月 7月 9月 11月と五回行う予定です。出演していただくゲストダンサーに関しても、ベテランのダンサーから若いダンサーまで幅広い年代の方たちとセッションしていけたらと思っています。そして全ての回を第九全楽章を踊るという構成にしようかと考えています。第九は誰もが知っている旋律であり、誰にも親しみやすい音楽です。そして私は今まで全楽章を踊った事は2回あります。それ以外で言えば、四楽章だけとか、二楽章だけとかであれば何度も踊ってきている楽曲です。そして聞けば聴くほど、毎回新しい発見があり、踊れば踊るほど新しい発見がある曲です。特に日本人に馴染みがあるのは第四楽章だと思いますが、聴いてみると、全楽章ともスリリングで美しい旋律の曲です。それが私にとって今回ナイトセッションライブの企画にマッチした感じがしました。なので今年は『第九の一年』と言う年にしようと思っています。一年間様々なダンサーと第九をセッションします。同じ条件で踊ることで、様々な音楽の捉え方や、ダンサーが変わればこのようにまた変わってくるのだと言うものを、楽しんでもらえたらいいなと思っています。今年一年は『継続』という事を目標に頑張っていこうと思います。その中でまた、出会うだろう新しい出会い、新しい景色、そういうものを蓄積し、未来につながるように、活動を続けていく、少しづつ、少しづつですが、明るい未来を目指して、ダンスで変えられことがある事を信じて、2025年は『歓喜の歌』を叫びたいと思いますコロナ以降、劇場から離れてしまったお客さんが少しずつ戻ってきてくれました。その足波をもっともっと戻ってくれるように、私たちダンサーも考え、試行錯誤して、どうすればもっと良い方向に未来が変わっていくのかを考え、新たなものを打ち出していかなきゃいけないと思っています。これからもセッションハウスがダンスの発信の場であり、そして未来のダンスを切り拓く場所であり続きるように。

 

笠井瑞丈

ヴォイス・オブ・セッションハウス2024より抜粋

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