ヴォイス・オブ・セッションハウス2020 笠井瑞丈
笠井瑞丈「大きな変化の年と向き合って」
2020年は大きな変化の年でした。新型コロナウィルスの影響で我々の生活が一変してしまいました。多くのダンス公演は中止になり、オンライン配信という新しい発表の形も出来上がりました。そして多くの劇場関係の人はその大きな影響を受けました。今回ここに去年一年の活動そしてこの変化の年をどのよう感じ、踊りに向かったかを書きたいと思います。去年2月中旬横浜赤レンガ倉庫で行われた『HOT POT』というダンスフェスティバルに鈴木ユキオさんとのデュオ作品で参加しました。この作品はセッションハウスで初演したものを、新しく作り変え発表した作品です。私たちは一週間横浜に滞在しフェスティバルに参加しました。ちょうどこの頃横浜港にはダイヤモンド・プリンセス号が停まっていました。これが刻々とこれから変化する世の中のはじまりだった気がします。HOT POT公演後翌日私は自分のソロ公演『花粉革命』を上演するためオーストラリアのメルボルンに行きました。羽田空港から香港をトランジットしてメルボルンに向かう飛行でした。香港空港の人の少なさにビックリしたのを思い出します。
3月筑波大学舞踊部に振付作品を作りました。10人の大学生が2ヶ月リハーサル向き合ってくれました。この公演が本番3日前延期を言い渡されました。結局この公演は延期から中止に切り替わってしまいました。そしてこの月KAATで行われた私の公演『DUOの會』が初日と二日目が行われ、3日目と4日目が中止となりました。ダンス作品は時間とともに作りあげ公演日初めて産声をあげ生まれるものです。その産声を上げる前に中止になってしまうというのはとてもやり切れない思いでいっぱいでした。そしてこの二週間後4月7日に第一回緊急事態宣が発令されました。この辺りから色々な公演やイベントが中止になり。劇場は閉鎖されひしひしと変化する世の中を肌で感じるようになりました。
そんな四月、まだ全く出口の見えない中、私は八月に行う新しい公演のリハを開始しました。これは一月頃伊藤直子さんとオリンピックの頃なにか企画をやろうと打ち合わせしたのが始まりです。もちろんその頃はこのような状況になっているとは想像もしていませんでした。公演を行えるのか分からない状況の中リハーサルをスタートしました。出演者は叡さんはじめ笠井家の全員に出てもらいました。作品全体の監修は私が行い、基本的には分業でシーン作りを行いました。作品のイメージとしては、コロナという問題にこれからどのように立ち向かっていくのかという意味を込めて『世界の終わりに四つの矢を放つ』というタイトルをつけました。大きな困難にぶつかった時こそそれを克服するチカラを我々は持っています。そのチカラこそ踊りを作るチカラであり作品を生み出すチカラです。
12月毎年参加している「ダンスブリッジ」も行いました。今年はオンラインという形での発表となりました。共演者には同じアスベスト館でダンスキャリアをスタートした鈴木ユキオさん 三浦宏之さんに出演をお願いしました。時期は違うけど、同じ稽古場を出たものが、20年後一緒に踊るというのはとても不思議な気持ちでした。踊り続けていく中、景色は変わりますが、また新たな出会いを作ってくれます。このような再会ができたことにとても感謝しています。
世の中この先どのように変わっていくか全く分かりませんが。これからも踊るという事が何かしら社会との繋がりを持てる世の中になるよう願っています。
笠井瑞丈
ヴォイス・オブ・セッションハウス2020より抜粋