竹之下たまみ「踊る灯は眠らない」

ヴォイス・オブ・セッションハウス2020 竹之下たまみ

竹之下たまみ「踊る灯は眠らない」

竹之下たまみ

昨年は様々なイベント・公演が中止や延期になる中、マドモアゼル・シネマは幸いにもオンラインという形ではあるが、予定していた公演を行うことができた。
とは言え、まず5月の緊急事態宣言が開けてからリハーサルを再開し、1か月ちょっとの練習期間で7月公演「途中下車」の準備をする必要があった。自粛期間は、いくら自宅でトレーニングやオンラインレッスンを受けたといっても、できることに限界がある。感覚が薄くなった足の裏を再度研ぎ澄ませ、若干落ちた脚の筋力を戻す必要があった。仕事をしながら夜間にリハーサルを行うマドダンサーは、通常1作品の公演に週2〜3回のリハーサルを3か月ほどかけて行うが、この時は週5日の練習を集中して重ねていった。公演1日目は人数を制限しての有観客公演、2日目は無観客ライブ配信公演と、2種の公演形態をとった。初めての配信公演ということもあり、観客席に届ける踊り方と、カメラの向こうで見ている方々に届ける方法の2種を研究。これを機に、ダンサーが画角を意識し、客観的に自分たちのダンスを確認し、「何を届けたいか」という演出の意識を個人個人が持ったことが、配信公演がもたらした大きな成長であった。遠方や身体的理由などで、劇場に足を運べない方々も公演を見ることができる、という配信公演のメリットにも気づくことができた。

 

それ以降の公演は季節も冬に向かうため、10月の「赤い花・白い花」、12月の「ダンスブリッジ公演」は配信のみとなった。配信でも作品を届ける機会があることに感謝しつつも、やはり何かが足りない。いつも3回公演を行っていたのだから、1回で終了してしまう配信は積み重ねて成長していくことができない。

 

そして今年2月。セッションハウス30周年記念として、コンドルズとともに、感染対策に気を付けながら久しぶりの有観客公演を行った。観客からの視線、息づかい、笑い声、手拍子、そしてアンコールの拍手。舞台は生ものであり、そこに居る人達と体で会話をしながら作り上げているのだ、ということを改めて感じた。当たり前のことが、こんなにも嬉しいこととは!千秋楽は有観客とライブ配信。現場でも配信でも見ることができるスタイルをとった。今後、公演スタイルは多くの人に、遠くに届けられるという理由から、おそらく有観客とライブ配信の併用がニューノーマルとなっていくであろう。今のピンチをチャンスに変えて、新しい時代が動き出している。

 

マドモアゼル・シネマ ダンサー 竹之下たまみ
ヴォイス・オブ・セッションハウス2020より抜粋

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