ヴォイス・オブ・セッションハウス2020 上田道崇
上田道崇「“限られた中の無限”オンライン公演という新しい発信」
これまで、観客の雰囲気や反応にリアルタイムで応えていくダンサーたちの気迫、それに追従しながら、音響や照明の操作を当たり前のようにやってきましたが、昨今の無観客オンライン公演という、カメラやマイクの向こう側にいる観客(視聴者)に対して行われる公演で、その観客の雰囲気や反応というある種の救いがリアルタイムで見えてこない状態が、ここまで当たり前にはってくるとは、正直考えてもみませんでした。
いままで、自分達の目や耳を頼りに、その瞬間を試行錯誤しながらも音響や照明を瞬時に操ってきましたが、自分の目ではなく撮影しているカメラ、耳ではなく収録しているマイク、といった物に置き換えて操作する難しさは、あえて言うと、色つきのサングラスをして、照明を操作したり、耳栓をしてかすかに漏れ聞こえる音を聞きながら音響操作するようなもので、果たしてこの状態でどのぐらいセッションハウスの空間や、ダンスの雰囲気を伝えていくのか、試行錯誤が続いています。カメラの画角や撮影するダンサーとの関係を模索しながら、“限られた中の無限”とどう向き合って伝えていくかをスタッフ一丸となって追及しているとことです。
いつの日かまた観客が戻ってきても、このオンライン公演という形は続いていく予感が否めない状況で、表現方法が更に多種多様に変化してくであろうこれからの時代にこそ、スタッフワークとしてより一層、表現の伝え漏れが無いよう、知識や経験を深めていかなければならないと痛感をしています。
テクニカル・ディレクター 上田道崇
ヴォイス・オブ・セッションハウス2020より抜粋