望月崇博 2022年ダンスブリッジ報告 Voice of Mochizuki Takahiro
2022年の「ダンスブリッジ」は趣向を変えて「3つのダンス」と題して5駒の公演を実施しました。そして公演だけではなくオンライン配信とアフタートークとズームトークを行い、作品の理解度を高める試みもしました。コーディネーターからの声をお聞きください。
コーディネーター:望月崇博
柿崎麻莉子
2022年のダンスブリッジは全5公演が行われ、各公演でテーマを共有する15団体が参加をした。順にボレロを主軸とした作品創作に挑戦した「3つのボレロ」、新進気鋭の振付家による「3つの未来」、映像や音響によってバーチャル世界の出現に挑戦した「3つのバーチャルリアル」、白鳥の湖をテーマとした「3つの白鳥」、ヒーローをテーマにした「3つのヒーロー」であった。
コロナ感染拡大以降、上演芸術の集客率低下は免れない状況下で、コンテンポラリーダンスの面白さを再確認し発信することを目的とし、新たな試みとして、@「事前レクチャー動画配信」(振付家によるテーマや題材の歴史についてのインタビューを動画配信)A「公演」、B「事後トーク」(各公演後の水曜夜に観客、出演者参加のZoomを活用した感想会)の3段階を設けた。
チーム鴨川
「事前レクチャー動画配信」について、例えば「傑作ボレロへの振付家としての立ち向かい方」「ダンスとバーチャル世界融合への未来的飛躍的談話」「バレリーナの日常とバレリーナにとっての白鳥の湖」というようにダンスを中心とした様々なジャンルの話を動画配信した。それによって作品創作の内部やそれぞれの振付家のダンスの捉え方が垣間見えるものとなり、作品鑑賞のための良き前段階になったと言える。ただし、数値的な側面からは各回の動画視聴を総計しても1000回ほどに留まり、周知の方法に課題が残るものとなった。
ブッシュマン
次に「事後トーク」において重視したのは「観客主体の参加」であった。鑑賞後から次にどのように繋げるかが現代アートマネジメントにおける課題の1つであり、作品から享受したものを誰かと共有することで発展的な作品鑑賞になるのではないかというところが解決の糸口になると考えた。コロナ以前であれば鑑賞後に居酒屋などで観客同士あーだこーだと話していた機会を模して、振付家も巻き込んだ場として仕組みづくりを試みた。
コーディネーターの誘導の元、振付家の作品創作の内側や着眼点、作品解説に加えて、各ダンサーによる他の振付家作品の捉え方、観客の疑問点の解消、ダンサー同士の昔話など多岐に渡り、作品を掘り下げる作業が出来、創る側にも観る側にも収穫の有るものとなった。
マグナム・マダム
主観的になるが土日の上演から数日空けた水曜に「事後トーク」を設定したことが、作品を反芻する時間となり良い機会となった。鑑賞後に残っているダンスの断片を基に「なぜ残っているのか?」という純粋なところから始まり、断片同士を繋ぎ合わせたり、組み替えたりすることで新たな作品解釈が生まれた。「わかりにくい!!」と言われるコンテンポラリーダンスにおいて、「事後トーク」での糸が解ける感覚、新たな糸が絡み合ってくる感覚は自分の思考を拡張してくれるものであったし、この二次的鑑賞にコンテンポラリーダンスの秘めたる可能性があるのではないかと考える。
テーマを共通にしたことに加え、作品を深掘りできたことでコンテンポラリーダンスの持つ「多様性」にさらに焦点が当てられ、ダンスの特質=個人の特質とも言うべき現象が把握できた。人が集まるライブ(上演)という形態のぜいたくな鑑賞と、オンラインで集まり探求していく終演後の鑑賞追体験の二つの方法が合わさり、今後の観劇の一つの在り方として提示できたことが今回の成果となった。この成果を継続し、今後も終演後の「鑑賞追体験会」含めた観客の舞踊鑑賞と舞踊上演に尽力していきたい。
結びに小噺。「3つのヒーロー」での良平さんの作品でアルゼンチン代表の10番のユニフォームを着た良平さんが転びPKを蹴るシーンがあった。その数時間後のW杯決勝でメッシが倒されPKになった。メッシはPKを決め、優勝し、まさに「ヒーロー」となった。ダンス鑑賞で得られた断片が繋がった面白い鑑賞体験であり、おそらく忘れることがない記憶となった。









