ガーデン活動報告
セッションハウスの2F【ガーデン】では、2023年も自主及び共同・協力企画のほか、レンタルの展覧会、トークの会、朗読会、演劇公演、クロッキー会の活動の場となった。
自主及び共同・協力企画の軌跡
1月11日〜15日 さかもと直子・柴崎崇山二人展
3月 8日〜12日 第7回わわわ俳句展(T)
3月22日〜4月10日 ツーゼ・マイヤー展「Spring Diary」
4月25日〜5月1日 百花U2023(T)
6月27日〜7月2日 三希展(T)
7月 6日〜11日 巴里祭に寄せたアート展(T)
7月14日〜17日 下条幸子展
9月13日〜18日 F展vol.7
9月28日〜10月7日 高須賀優展「現れる人物 旅のクラウン」(T)
10月17日〜23日 大和聖美×X-Ray二人展「万華鏡」
11月 3日〜 5日 23歩展「せん」
11月11日〜16日 beyond borders〜バックボーンもジャンルも異なる作家たち(T)
11月19日〜26日 ART SESSION(有川道子、小川泉、津田恵子)
12月 6日〜10日 絵画教室アトリエロゾー展
12月16日、17日 from an art展(松原響)
※(T)は演劇美術社の豊田紀雄氏の制作企画
※吉田卓史主催のクロッキー会は36回開催
※渡辺一枝トークの会「福島の声を聞こう」は1回開催
ガーデンではここ数年コロナ禍の影響で、展覧会などは数多く出来なかったものの、毎年恒例の企画も定着して、中味の充実化を感じされるものが多数ありました。それらの企画を縫って多数実施されたのがクロッキー会でした。それを主宰する吉田卓史のクロッキー会によせる声をお聞き下さい。
セッションハウスクロッキー会を通じて学んだこと。 吉田卓史
その日は、いつも通りとても良い天気、6 階の窓からマドリードのメインストリートの地面が見えないくらい多くのストライキ中の人達を眺めている 90 歳くらいのおじさんとその奥さんから、なんというか、なにかしらの高貴さみたいなものが感じられたことを時々思い出します。 僕がその6階の人体デッサン研究所に通っていた当時、スペインは不況で、しょっちゅう大きなデモをやってて、半分はお祭り騒ぎなのだけれど。モデルもストライキ中の研究所、いつもは 100 人以上いるのに、その老齢のおじさん達も含めて、たった6人ばかし。僕もその中にいて、仕方がないから、自分達をモデルに絵を描くことに。その時、外で大騒ぎしてしている人達より、ここで、そんなふうに絵を描く人達の方が、より自然で、しっかりとした価値観を持ってて、大切なことが何なのか?分かっているように感じたことを覚えています。
僕は、今ではクロッキー会以外、芸術と関係ない普通の仕事をしながら、何年住んでも慣れない東京に居て、たまにこんな所に居るのはウンザリだ、なんて思った時など、あのおじさん達のことを思いだして、何が大切かを考えるようにしてます。僕がセッションハウスクロッキー会を引き継いで、もうだいぶ経ちますが、当初からのコンセプトである描き手とモデルとのセッションの場という空間がとても自然に出来上がっていると感じます。それは、相互の純粋で単純な動機から生まれるような感じで、その時、この場に来てくれた人達にあのおじさんから感じたような、なにかしらの高貴なものを感じることがよくあります。
そうして、僕にとって、そのような人達がつくってくれたこの空間を体験していること、それ自体がとても大切なものとなっていることに気づき、嬉しくなり、前向きになり、またそれが生きるための重要な思想と、リアリティーのヒントを与えてくれるように思えるのです。 あの時、感じたように時代や世の中がどうであれ、しっかりとした自分の価値観を持ち、それに対して真摯な態度でいることの方が大切で、それはまた、かなり難しいことではありますが、僕もクロッキー会を通して感じる純粋で単純な動機がなんなのか?を考えれば、自分のすべきことが分かるように思えます。
先日、あの当時からお世話になっているマドリードのおばさんから、メールが届いて、何かをやり続けるためには、楽しむこともとても大切ですよ、というアドバイスをもらい、そして添付してくれてたおばさんの絵は、確かにその楽しさが感じられるものでした。
そう言えば、前にモデルになってくれたダンサーさんが、「お客さんも温かく、とても楽しかった」という感想をなんとも清々しい表情で話してくれたことがありました。そう言ってくれた人達やこのクロッキー会に通ってくれる人達は、その楽しむことの大切さを分かってて、それもまた、このクロッキー会の空間を作っている要素であると、思います。 絵を続けてきて、僕が学んだことは、いろいろあるとは思いますが、最初に頭に浮かぶのは、それを通じて、出会えた人々の大切さです。それが自分の考えを作ってくれて、助けてくれて、ゆえに、生きていけると、心から思います。僕にとって、セッションハウスクロッキー会もそのチャンスを与えてくれる大切な場となっていると、感じます。
吉田卓史
ヴォイス・オブ・セッションハウス2023より抜粋