おしゃべりなアート展の18年と今
これまで銀座の画廊で開いていたディレクター・アーチストの佐藤省さんが企画主宰されていたグループ展は18回目となるのを機にセッションハウス・ガーデンで開いて下さることになりました。平面作品に立体作品もありの百花繚乱の展覧会に寄せる佐藤さんに熱い想いを語っていただきました。
アート・ディレクター佐藤省
セッションハウス・ガーデンで初めて開催した「おしゃべりなアート展 Message Art Ehibition vol.18」は。2025年11月10日〜16日の会期を無事に終え、改めてセッションハウス・ガーデン空間に展開した60人の作品の陰影と、作家たちから提出されたコンセプトを読み返すなど、展覧会をふり返り余韻を味わっています。
思えば、このMessage展は、銀座にあったギャラリー悠玄(泰明小学校の近く)で、私がディレクターをしていた時に、ジャンルを超え、世代を超えて交流したいという要望が若い作家たちからあり、それではと、初回は100人もお声をかけ、ひとり2点の作品を1階、2階、3回、地下の空間を使用して展示したことから始まりました。200点の作品がそれぞれの特色をもった3層の空間に展示されて、壮大な景色のハーモニーを奏でました。「今,この時」をテーマにして、皆さんの情熱と力量が発揮されました。
初日のオープニング・パーティでは、作家たちがそれぞれに「自作を語るひと時」が設けられ、作品に対する熱く、真摯なまなざしが伝わってくる言葉に参加作家たちが耳を傾けるーそうした親交を、Message展は大切にしてきました。
18年の時を経て、作品は一人一点となり、一年間に紡がれ、凝縮された時間が、その一点の作品を輝かせています。
この展覧会は希望者の応募によるのではなく、私からお声をかけさせていただくという形でやってまいりました。Message展を率いる私のポリシーは、作品を競うのではなく、「その作家の内的宇宙を空間の中へ響かせ、空間からそれぞれの作品が立ち上がっている」ということです。
「今,この時」というテーマは、そこに作家の生き方や社会の現象がおのずと投影され、物語られることになり、それが、さまざまな造形手法による平面および立体表現として展開されています。本当に、多種多様です!
アート表現は、日常からかけ離れたところでの特別な分野などではなく、来廊された皆さんと作家たちが「作品をめぐって気軽に会話を楽しむ」―そうした介在の力をもったアートの空間を演出することが大切なのです。作品に対する感覚も、言葉を重ねることによって視野が変化していく・・・観る角度が変われば、向こうから、また新たな作品の表情や感触がやってくる・・・こうして、作家と作品とご覧くださる方々とが結ばれることで、会話が自然に弾み、充実した至福のときを味合うことにつながっていきます。
言葉と作品・・・ということで、Message展では、椿座による「言葉に置く行為」としての《ことば語り》というひと時が、毎回企画され、続けられています。メンバー4人から発せられる言葉は、詩、俳句、短歌、小説等々を、単純に朗読するというのではなく、身体性を重んじたとても創造的な声の演出により、声の響きが、作品が配された空間を照らし、人と人との間に気が流れ、ときに会場に集まった方々による声の参加も加わって、声の多量性とテンポとが、独特の空間性を生成します。
また、音の響きということで、本展の初回にコントラバス奏者の齋藤徹さんをお招きして、「音以前の音」というものを聴かせていただき、その後もいろいろの方面のゲストをお連れくださり、わたしたちを楽しませていただきました。ふだん聴くことのない音色や歌を奏でてくださり、音のもつ孤独感や煌き、ある時は狂気を帯びたユーモアを即興で弾いてくださっていましたが、数年前にご逝去されてしまい、本当に残念でなりません。
2016年冬にギャラリー悠玄が閉廊となり、その後2ヵ所のギャラリーで開催しましたが、都市再開発の波でギャラリーが移転という運命となり、私は2年近くギャラリー探しをしていました。そして、たどり着いたのが、セッションハウス・ガーデンでした。オーナーの伊藤さんを初めてお訪ねした時に、齋藤徹さんのお話をしたところ、伊藤さんもご存知で、このご縁によりセッションハウス・ガーデン空間をお借りできることになりました。この不思議なご縁に感謝しています。
初めてセッションハウス・ガーデン空間の展示演出ということで、私は、大変な緊張で搬入日を迎えました。しかし、実際は、空間の広さと明るさが、作品たちをのびのびとさせ、私の気分を和ませ、参加作家たちもこの新しい空気感に弾み、搬入作業は順調に進められました。おかげさまで、来廊される皆さんにも大変好評で、セッションハウス・ガーデン空間が私たちを待っていてくれたのかもしれない・・・そんな思いにさせられた次第です。
2026年11月に、また展示を予定していますが、支えていただいている作家たちのさらに磨かれるであろう世界が、また、次へとつながりました。その嬉しさが、すでにこの秋に
向って、空間と結び合ったイメージとして、私の内で膨らんでいます。



