石関美穂『照明をやり続けて考えたこと』

照明をやり続けて考えたこと

石関美穂(照明・デザイン担当)

 

オーケストラ演奏者は、はじめ各自生まれ持った気質によって楽器を選び、選んだ楽器を習得するにしたがって楽器に合った性格になっていくという説を聞いたことがあります。それではこのセッションハウスで照明を約30年担当してきた者はどう変化しているのかを思いつくままに挙げてみます。

 

◯夕焼・月を見ると再現するための明かりの色を考えてしまう、施設でどこに照明があるか探しがち。機材の取扱い練習は手近に機材がないとできないが、イメージトレーニングならいつでもタダでできます。「夕日」や「月夜」はオーダーあるあるなので、いろんなパターンを考えられると役立つことがあります。また、舞台だけでなく美術館や博物館、水族館、テーマパークなどもわかりやすく楽しめるパターンを見ることができて良いです。

 

◯音を立てなくなる

 

照明スタッフは、ホールの袖などで待機するとき出演者と舞台監督の邪魔にならないよう音を立てず気配を消せるようになります。セッションハウスは施設自体がコンパクトなので余計にそうなると思います。具体的には呼吸・くしゃみの音を消せる、衣擦れ音が少ないユニフォームを選びがちになり、動作を最小の手数で考えるようになります。また、ポーカーフェイスになります。いま思えば、ある時期スパイ映画や元CIA員の手記などを好んで見ていた時期がありましたが、無意識に何か学ぼうとしていたのかもしれません。ただイーサン・ハントは無駄に行動が派手なので「仲間に優しくする」以外はあまり参考にはならないと思います。

 

◯音楽を聞くとき照明の展開を考えてしまう

 

本番で使った曲を耳にしてその時のきっかけの感覚も思い出すことはよくあります。またその逆に、日常生活の中でたまたま聞いた曲が興味をひいて、歌詞や構成(イントロ8×2カウント、Aメロ8×4カウントなど)を調べて面白がっていたのが、後に本番使用曲として再会し、作品の流れを理解するのが少し早まりかつ愛着が湧くというちょっとしたお楽しみが生まれることもあります。

 

このあたりから、「出会ったものはひとまず肯定する」姿勢が培われる気がします。スタッフになって年数を経て、数多くの舞台作品、作家の考えに関わり、自分の予想も及ばない世界観を持つ人が数多いるのを実感することが増え、「食わず嫌いはもったいない」と思うようになります。

 

○音に敏感になる

 

きっかけを外したくない一心で短期間の集中力が強くなっていきます。その中で特に音に関して敏感になったように思います。個人的日常的には、水音・扉の開閉音などの異音が気になる、聴覚検査に真剣になる、逆に体力を温存するために瞬発力を試されるゲームをしなくなるなどがあります。

 

こうしてみると、照明スタッフになってから、光そのものよりも音に対する姿勢の変化が多いという結果になりました。照明機材は基本は劇場などその場に行って初めて使えるもので、自前でテストできず、事前に可能なのはイメトレと計算だけです。だから明かりにたどりつくための環境を整えることに力を注ぐことになるのだと思いますす。

 

今後の目標としては、@これまで経験したことのない明かりへのアプローチにトライする A疲れからできるだけ早く回復する方法を見つけることです。

 

もう少し明かりのお手伝いを続けていけるよう、想像力の間口を広げ、健康でいられたらと思っています。

 

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